追悼文・高橋ひろ氏へ

昨日のことを。

午後。
その日降り続いていた雨は2時を回ってもやむことはなく、
昼下がりとは思えないほどに、暗かった。

部屋の電器をつけようと思ったけれど、時間が時間だけに、ためらわれた。

こんな時間だというのに眠気がまだ残っていたため、
僕は外に出た。
部屋の近くの自販機で無糖のコーヒーを買って口にしながら部屋に戻った。
(最近になってコーヒーの覚醒作用の意外な強さに気がついたんだ。)

部屋に戻って何気なく。
本当に何気なくブックマークのYahooの文字をクリックした。
ニュースを読み進めていくうちに、高橋ひろが亡くなったことを。知った。

「外は雨がまだやまずに」

確かiPodに入っていたはずだ。

僕はUSBからそれを引き抜き、飲みかけのコーヒー缶を掴んで、再び外に出た。
雨はまだ降り続いている。光は雲に隠れている。

彼の歌を聞きながら。
どこへともなく、歩いた。

「忘れないで 忘れてくれ」


太陽がまた輝くとき。

僕は歩きながら、公園のベンチに座った。

空を見上げると、雨はまだ止んではいないものの、
薄い雲が太陽をすかしていた。

学校帰りの子供たちが、あたりを走り回っていた。

「まだ、こんなに暗い……」

それは、とてもとても深い意味を持っているのかもしれなかった。

座りながら、彼の歌を聴いた。
音楽のことなんてほとんど何も解らないけれど、
特に大好きなアーティストと意識したことはないけれど、
必ずメディアには、iPodには、必ず入れて、
なぜかもう10年も彼の歌を聴いていた。

「外は雨が、まだ止まずに……」
「本当は誰もが伝えたい心の声よ、今こそとどけ」


ああ、この歌を歌っている人は、死んだんだな、

ああ、この歌を歌っている人が、死んだんだな。

そう思った。


「外は雨がまだやまずに、濡れてる人々と街が、それでも太陽信じてる」/高橋ひろ 太陽がまた輝くとき


薄い雲が太陽をすかしている。
学校帰りの子供たちがはしゃいでいる。


彼の歌は一生忘れないだろう。

十舞啓斗